拝啓、年明けの爽快感が冬の空を彩る今日この頃、皆様如何お過ごしでしょうか。
先日、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と言う作品を観ましたので私の主観による個人的な感想を書き連ねていきたいと思います。
主人公ヴァイオレット・エヴァーガーデンは孤児であり、拾われた時には既に自分の中にある人間らしい喜びを感じる能力や他の人に対する感情共感能力が著しく衰えていました。
最初、この子は人の心や感情を失ってしまっているのだと思っていたのですが、観ていく内にそうではなく、心や感情の働きは人と同じようにあるのだけれど、それを感じ取る事が出来ないだけなのだと思いなおしたのです。
人の心を失ったなら、それはもう獣と一緒で人間の命令なんか聞く訳ない。
聞いたとしてもそれはあくまで私利私欲を満たす為のモノで、ヴァイオレットのように恩義、忠義、忠誠心、もしくは親愛の情を動機としたモノにはなりえない。
狼に育てられた男の子の話が現実にありますが、その話を思い出しながらそのようなことを考えていました。
幼少期のヴァイオレットが人を信じない野良猫みたいだったもので、野生と言うものが連想された訳ですね。
戦争と言う環境
しかし、元々情動を感じ取る働きが鈍かった上に戦争と云う環境下に置かれた事が拍車をかけたのでしょう。
ヴァイオレットは自分の意思や感情を排除して機械のように命令を遂行する能力だけを発揮するようになっていきます。
人間としては面白みに欠けても戦闘における人的資源としてみれば、これ以上優秀な人材はありません。
ただ、自分の意思や感情を排除すると言う選択意思決定をするのは自分の意思ですから、ヴァイオレットに全く自分の意思がなかったと言うことにはならないと私は考えています。
また、命令がない限り、無意味な略奪や無力な市民への攻撃をする事も無かったとも考えます。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンを観て強さや幸せについて考えたこと
ヴァイオレットは戦争が終わった時には既に、愛情と云う感情を持っていました。
むしろ、その想いは親を想う子のように、深くて一途で純粋です。
ヴァイオレットは戦時中、精神的には最強でした。
殺す恐怖も殺される恐怖も感じず、あれがイヤだこれが気に入らないと駄々をこねず、命令以外にはあれが欲しいこれが欲しいと望まず、ただ淡々と命令をこなしてゆく。
戦時中と言う環境下において悩みも苦しみも感じないと言うのは、ある意味幸せだったかもしれません。
一兵士として、戦闘時における自軍に対しての貢献度や評価は非常に高かった訳ですし、理解はされなくとも戦力としてはこれ以上頼もしい味方はいないでしょうから。
ある意味ではヴァイオレット・エヴァーガーデンは一兵士として、戦争と言う環境下における最適化を果たしていた。と云う言い方も出来ると思います。
しかしもし、少佐がヴァイオレットに対して、心の理解に努め、その心を鼓舞し自軍の士気を高めよと命令していれば、彼女はその方法を学び、英雄のような存在に祭り上げられていたかもしれませんね。
戦争が終わり、最愛の人を見失ってしまったヴァイオレットは愛と言う感情を理解することを欲して、手紙の代行執筆業務をすることに決めます。
そうして愛の理解に努めるヴァイオレットは幾多の出会いと別れ、様々な心の機微を共有し、そこに寄り添おうとする経験を繰り返していく内に、かつて戦闘時においては無敵と言っても過言ではなかった精神的強さを失っていきます。
はい、相手を思いやる心、心の痛みがわかると言う事はそう言うことです。
肉体的な痛みを感じない無痛症と言う病気がありますが、ヴァイオレットが持つ精神的な強さは殺される覚悟を以って殺すと言うような類のものではなく、この感覚麻痺、無痛、不感の類であると私は思いました。
格闘技のリングに上がった若くて才能豊かな熟練のファイターが、肉体的な痛みを感じない身体であると云うようなものです。
その無痛の感覚を失ってゆくのは戦闘時において強いか弱いかと言う、ごく限られた小さな視野だけで言えば明らかに弱くなったと言わざるをえません。
しかしながら、戦争の終わったこの街においてそれは、正しい弱さであると思いました。
いやまあ、両腕サイボーグ化してますから物理的な意味では明らかに強くなってますけれども。
両腕機械化ならではの、攻殻機動隊を思わせる胸熱シーンもありましたけれども(台無しやないか)
それはさておき、手紙の代行を初めたヴァイオレットは悩み、苦しみ、傷付くようになりましたが、しかしそれは同時に人の心に寄り添い、思いやり、助け、支える心の温かさや柔らかさを知ることでもありました。
ヴァイオレット・エヴァーガーデンは聲の形や最終兵器彼女のような作品が好きな人にはオススメです。
木漏れ日がゆっくりと大地を温めていくように、ヴァイオレット・エヴァーガーデンが心を静かに潤してくれることでしょう。
#ヴァイオレット・エヴァーガーデン ご紹介2/4
物語を彩るのは様々な依頼人たち。
第1・2話はヴァイオレットと代筆業との出会いの物語。
第3話は傷痍軍人の兄を立ち直らせた妹の手紙。
第4話は恋した少女と家族とのすれ違いの物語。#VioletEvergarden pic.twitter.com/GHmBFKmBr9— 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」公式 (@Violet_Letter) December 27, 2019
#ヴァイオレット・エヴァーガーデン ご紹介4/4
第10話は一人残される娘へ、先立つ母が送った手紙の物語。
第11話は傷ついた少年兵が恋人へ送った最後の手紙の物語。
第12・13話はヴァイオレットの見出した「愛してる」の物語。あなたの心を動かすエピソードにきっと出会えます。#VioletEvergarden pic.twitter.com/LpmZuB6vEl
— 「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」公式 (@Violet_Letter) December 27, 2019